たろう氏のブログ

全てノンフィクションです

【蕎麦屋の姐さんのお話① 】

・たろう氏の住む閑静な住宅街の片隅には50年近く続いている昔ながらの蕎麦屋がある。

・実家暮らしのたろう氏は、30年ほど前からその蕎麦屋の存在を知っていたが、あまりの近さ故に食べに行ったことはなかった。

・しかし、この歳になりもっと地元に親しみたいという想いが芽生え、心機一転その蕎麦屋の門をくぐることにした。

・店の外装は古いが、未知なる店内には趣深い木の机と畳の座敷のある居心地の良い和の空間が広がっていた。いかにもと言った具合の古き良き日本の蕎麦屋だ。

・しかし、ここはただの蕎麦屋ではなかった。片田舎のこの店には街一番(たろう氏調べ)の美人店員さんがいるのだ。

・その人はとにかく美しい。料理を運ぶ立ち居振る舞いさえも美しく、接客時に見せる笑顔が眩しすぎる。芸能人で例えるなら倉木麻衣を和風にしてより美しくより上品にした感じのイメージだろうか。

・また、その人は年齢不詳だ。若々しく見えるが40前半〜下手すれば50近くなのかもしれない。真の美人には年齢など関係ない様である。

・そして、その人は色気が凄まじい。エプロンを着ているだけでも店内をほとばしる色気。愛される喜びを知り尽くした女性の顔というものは艶っぽく自信に満ち溢れている。

・何百何千という殿方からの寵愛を受けてきたであろう女性。人はそれを「別嬪」と言うのか。

・なお、この店員さんの別嬪具合は食べログのコメントにもしばしば書かれているほどだ。

・閑静な住宅街にも関わらず、この老舗にはひっきりなしに客が来て店員さんとの会話を楽しんでいる。まるで甘い蜜に導かれる兜虫のごとし。

・そうか、その美貌により客を呼び込む存在、それを「看板娘」と言うのか。

・たろう氏は一瞬でこの姐さんの虜になっていた。


・「なんて美しい人なんだろう...。」姐さんに見惚れていたたろう氏はいつまで経っても注文を決められないでいた。

・うっかり姐さんと目が合うと、「あ!お決まりですか?」とあろうことか、誤解した姐さんはたろう氏の元に近寄ってきた。

・「ごめんなさい、まだ決まってないです...。」突然憧れの姐さんに話しかけられドギマギしたたろう氏の声は少し震えていた。

・ヤバい!早くも好きなのバレた!!たろう氏はそう思った。相変わらずのガイジっぷりである。

・沢山あるメニューに悩んだ挙句、盛り蕎麦とミニカツ丼のセットを頼んだ。

・店の大将が料理を作る間、姐さんはせかせかと忙しそうに何か作業をしていた。しかし、そんな中でもたろう氏のグラスの水が少なくなるのに気がつくとすぐさまお代わりを注いでくれた。姐さんは美しいだけでなく、接客も一流なのである。

・しばらく経つと、姐さんが極上の笑顔とともに料理を運んできてくれた。なんとまぁ贅沢な昼食であろうか。食べるのが惜しいくらい綺麗に並んだ料理であった。

・「うま...。」こんなに美味い蕎麦を食べたのは生まれて初めてだった。そうか、これを「蕎麦」と言うのか。この店では実に多くのことを教えてくれる。

・蕎麦だけでなくミニカツ丼もなかなか美味だった。なるほど、ここの大将腕は間違いない様だ。

・蕎麦を食べ終わる頃になると、「蕎麦湯をどうぞ。」と絶妙のタイミングで姐さんが蕎麦湯を持ってきてくれた。姐さんは全ての客に目配りをし店の状況を俯瞰しているのだ。接客業の鑑である。

・料理の旨みを最大限に引き出す風情ある空間、舌鼓を打つ絶品蕎麦定食、そして極上のおもてなしを提供する別嬪姐さん。これらが三位一体となって1つの食文化を形成している。日本が世界に誇るべき名店はたろう氏の自宅から徒歩2分の場所にあった。

・何でもっと早く気がつかなかったのだろう!子どもの頃から知っていた店なのに!いや、死ぬ前に気づけただけでも良かったと思うことにしよう。


・楽しい食事の時間も終わり、後ろ髪を引かれながらもたろう氏は姐さんの元にお会計に向かった。

・「ご馳走様でした。」そう言うたろう氏の目は姐さんにサインを送っていた。

・〜姐さん、素敵過ぎです!また会いに来ます!〜

・「お会計●●円になります。ありがとうございました!」そう言う姐さんの目もまた、たろう氏にサインを送り返していた。

・〜あららお兄さん、こりゃ完全にあたしにホの字だね。バレバレだよ?姐さんは何でもお見通しなんだからね!また来てね!〜


・たろう氏に行きつけのお店が出来た。


つづく