たろう氏のブログ

全てノンフィクションです

【蕎麦屋の姐さんのお話④】

・在宅勤務の束の間の昼休み、軽い足取りで今日もあの蕎麦屋に向かう。

・「ガラガラっ」引き戸の入り口を開けたそこには少し久しぶりに見る姐さんの御姿があった。

・「おっ!今日姐さんいるじゃん!やった!」たろう氏は心の中でグッと拳を握りしめた。

・いつもの如く蕎麦+ミニ丼のセットを姐さんに注文するや、相変わらずの姐さんの美貌にすっかり見惚れてしまっている自分がいた。

・「やばい。今日も姐さん綺麗だなぁ」

・などと悦に浸っていると、「ガラガラっ」と高年男性客(推定70歳前後)がお店に入ってくるなり親しげに姐さんに話しかけた。

・「おっ!今日は●●ちゃんがいるね!やっぱり別嬪さんがいるお店はいいね〜」

・何とも昭和の香り漂うおっちゃんだ。今となっては煙たがれる不適切気味な香りに、たろう氏は思った。

・「いいこと言うね」

・実際に別嬪さんがいるだけでそのお店の魅力は5割増しになると言ってもいい。さすがおっちゃん、よくわかってる!それを言いたかったんだ!

・そして姐さんのことをまさかの名前呼び。長年通い詰めている感じが伝わってきた。肝心の名前をよく聞き取れなかったのが何とも口惜しい。

・いつか必ず姐さんの名前を聞き出して自分も姐さんを名前呼びしよう!たろう氏はそう誓った。なお、これはストーカー行為ではない。近隣商店との親睦である。

・それはさておき、そんなおっちゃんの戯言に対し姐さんはこう答えたのだ。

・「またまたぁ!そんな事言ってくださるのは●●さんだけですよ〜」

・なんとまぁ100点満点の返事だ。みんなからいつも言われているに違いないのに、何とも上品で別嬪さんならではの処世術を感じた。やっぱり姐さんは最高の女性だ。

・こういう昭和のノリには昭和のノリで返すのが1番。相手の気持ちを善意として受け止め場の空気を壊さないような返答をする。これこそが真の心遣いなのだ。

・男性が粋なちょっかいを出し、女性が余裕のある心遣いで応える。この両者の絶妙なバランス感覚によって昭和という時代は成立していたのだろう。事あるごとに不適切だのハラスメントだの叫ぶだけの令和の時代は世知辛く人として情けない。

・今になっても昭和の店に昭和の人がいて昭和の会話をしている。これこそが人間の本来あるべき姿なのだ。

・そう強く感じた平成生まれのたろう氏なのであった。


つづく