たろう氏のブログ

全てノンフィクションです

【無理ゲー開幕!】

・2009年4月9日桜もだいぶ散ってきたその日の夜、たろう氏が所属していた体育会ラクロス部ではお花見コンパが開催されていた。

・そのコンパは部活の新入生歓迎会という名目ながら他大学の女子ラクロス部を交えた謂わゆる合コンだった。

・多くの若い男女が集まる中、華の1女として人一倍の輝きを放つ女性がいた。

・彼女の名は「カナコ」。大学2年生だったたろう氏は新入生のカナコに一目惚れをした。

・カナコはthe小悪魔系といった容姿をしており、少し背伸びをしてオシャレを着飾る姿が初々しく可愛かった。たろう氏がこれまで好きになった女性とはタイプが違う感じだったが、それはたろう氏のストライクゾーンが改定された瞬間を意味した。また、年下の子に恋をしたのも初めてのことだった。

・お花見コンパは3日間行われたが、最初の2日間、たろう氏は係でもないのに先輩に裏方で奴隷の様にこき使われ、会を全く楽しむことが出来なかった。

・それ故に、やぶれかぶれの感情で迎えた最終日にカナコとの出逢いが待ち受けていたのは、恋愛の神様が与えてくれたご褒美なのだと心から思った。これまでの憂さを全て回収するだけのドラマがあった。

・その日のたろう氏は会心の一発ギャグで会場を沸かす等絶好調。カナコもたろう氏に好感を持ったように思えた。

・会も終わりを迎える頃、たろう氏はカナコと連絡先を交換することが出来た。また、酔った勢いに乗じて2人が仲良く握手したツーショット写真まで撮らせてもらった。

・「たろう氏にもついに春が来た」と部活の仲間たちは歓喜。高校3年の時に経験した失恋を未だに引きずっていたたろう氏であったが、ようやく報われるときが来たのだと誰しもが思った。

・あまりにも幸せな春だった。花見の時のツーショット写真を仲間の誰かが加工してハートで囲ったものをたろう氏は携帯の待ち受け画像にしていた。そして、携帯を開くたびにニヤニヤしてしまった。

・「早くデート行けよな!おれら全員で見に行ってやるから!」と言う仲間たちからのイジりに憤るふりをしながらも内心はイジられるのが嬉しくて仕方がなかった。

 


・4月下旬、たろう氏の人生初デートは新宿アルタ前集合で始まった。

・今振り返ると、びっくりするくらい計画性のないデートだった。事前に考える時間はいくらでもあったのだが。

・とりあえず、三丁目の高級デパートをぷらぷら歩き、「高いねぇ」みたいなことを2人でボヤいた気がする。あの時おれは何がしたかったんだろう。

・夕食をどうするかも全く決めていなかった。ぐだぐだしているうちにカナコの方から「居酒屋でも入らない?」と言ってくれてとても助かった。

・たまたま目の前に居酒屋「東方見聞録」があったのでそこに入ることにした。何を話したのか覚えてはいないが、かのマルコ・ポーロもがっかりするくらいたろう氏に会話の引き出しはなかった。

・結構な早い時間で初めてのデートは終わってしまった。改めて字面にしてみると全く楽しめる要素のないクソみたいなデートだが、たろう氏はドキドキで終始胸がいっぱいだった。一緒にいられることが幸せでカナコを楽しませたいと思えるだけの心の余裕はまだなかったのだ。

・そして残念なことに、その日を境にカナコからのメールの返信は明らかに遅くなり、2日後とか3日後とかが当たり前になった。

・返信が来ない間は死んだ様に落ち込み、来たら歓喜の渦に包まれる。この症状は躁うつ患者のそれの様だった。

・この時点で脈はかなり薄かったのだが、カナコからの返信が来る限りたろう氏は望みを持ち続けた。

 


・5月中旬、2回目のデートに漕ぎ着けることが出来た。前回の反省を踏まえ、悩んだ上でのデートは渋谷での映画。観たのは「名探偵コナン〜漆黒のチェイサー〜」だった。

・いかにもモテなそうな男の映画チョイスだったが、ことのほか映画自体は面白く、クライマックスで主要キャラが銃殺されるシーンになると、カナコは声を出して驚くほど映画にのめり込んでいた。隣に座っていたたろう氏はむしろカナコの純粋さに驚かされた。さすがは仕事人コナンである。

・映画を見た後はいい感じの雰囲気になった気がした。ここで何をするかが重要だったが、たろう氏はゲーセンで遊ぶという選択をした。

・その選択が正しかったのかどうかはわからないが、たろう氏が日頃から精進していたUFOキャッチャーでカナコのリクエストしたぬいぐるみを数回で取ってあげることが出来た。

・そして、UFOキャッチャーとの死闘を制し、意気揚々のたろう氏は帰路の道玄坂にて少しだけ冒険してみた。

・たろう氏の右手がそっとカナコの左手を握りしめたのである。

・「...どうしたの急に?」とカナコが少し照れながら言ったのを受け、心臓が飛び出るくらいドキドキした。

・好きな子と手を繋ぐという達成感と周りに見られているという気恥ずかしさが相まって、たろう氏はこの上ないトキメキを感じていた。このままカナコと付き合ってずっと一緒に歩いていたいと思った。

・前回と比べれば2回目のデートは大成功だった。帰りに手を繋いだときカナコは何を思ったのだろう。嫌がる素振りはなくたろう氏としては脈ありだと思った。

 


・しかし、その後もカナコからのメールの返信は遅いままだった。向こうからしてみれば、既にしつこいだけの存在だったのだろうか。

・精神が崩壊しかけたたろう氏であったが、それでもなんとか漕ぎ着けた3回目のデートは六本木に行った。

・デート当日カナコはサイフを家に忘れてくるという暴挙に出た。たろう氏は「お金はおれが持つから気にしなくていいよ」などとカッコつけた気になっていたが、この時点でカナコとの関係が終了していることに気がつくべきだった。

・また、その日カナコは大学内での活動があったためスーツ姿で来た。その姿は初々しくとても可愛らしかったが、奥手のたろう氏は「スーツ姿可愛いね」とか「似合ってるね」といった褒め言葉の一言も掛けてあげることが出来なかった。本当にその時の自分をぶん殴ってやりたい。

・そして、この日のデートはまたしても映画。さらに選んだ映画が「真夏のオリオン」というまさかのミスチョイスだった。

・真夏のオリオンは太平洋戦争における海軍を題材にした作品であるが、たろう氏が崇拝するCHEMISTRYの堂珍氏が俳優として出ているから観てみたいという個人的な理由でのチョイスだった。

・自分の都合に相手を付き合わせるなどというのは初期段階のデートにおいて御法度である。それが明るい内容ならまだしも戦争モノの映画など論外だ。ただ1つ言えるのは、たろう氏は失敗から1つずつ物事を学んでいくタイプだったということだけだ。

・映画の後はやはりしっとりとした空気感になってしまった。なお、たろう氏が見たかった堂珍氏は映画開始後わずか30分ほどで戦死した。

・既に色々失敗してる感のあるデートだが、たろう氏はこの3回目のデートでカナコに告白することを心に決めていた。

・「告白するなら3回目のデートで」というのは恋愛における定石とされる考え方の1つである。連絡も全然来ないし、サイフも持ってこない女性であってもたろう氏はこの定石を信じた。

・告白は森ビルの展望台で外の良い景色を眺めながら行った。その行い自体は悪くなかったが、問題はそれが昼の3時だったということだ。

・何で夜景を見ながらの告白にしなかったのだろう。当時の自分の至らなさには目に余るものがあるが、恋愛初心者というのは得てしてそんなものなのかもしれない。

・「彼女になってほしい」とたろう氏が告白すると、「...ちょっと考えてもいい?」とカナコは勿体ぶった。

・行けたのか!?とたろう氏は大いに期待をしたが、待っていたのは「ごめん付き合えない」という返事だった。告白された側もストレートに無理とはなかなか言いづらかったのだろうなぁと今ならカナコの心中を慮ることが出来る。

・結局振られてしまったたろう氏であるが、「今回は上手くいくだろう」というより「今回ばかりは上手くいってほしい」という切なる願いがあった。

・しかし、恋愛の神様は一切の空気を読まない。辛い過去があろうが、どれだけ強い想いを持っていようが、相手の心を満たせない者は容赦なく切り捨てられる。

・ダメだった要因はなんだったのだろうか。たろう氏が恋愛初心者でカナコを上手くエスコート出来なかったことは勿論だが、技術的な部分を差し引いたとして、たろう氏の人となりがカナコに伝わっていなかったことが1番の要因だった様に思う。カナコにとってたろう氏はお金を多くもってくれるただの「いい人」に過ぎなかったのだ。

 


・カナコとの出逢いを通じて恋愛の厳しさを思い知ったたろう氏は、自身の恋愛に対する課題を整理し日々改善を試みた。

・しかし、課題解決は容易ではなかった。カナコに振られた後は2回目のデートに漕ぎ着く人さえ現れなかったのである。

・恋活パーティーや相席居酒屋に出向くことも多々あった。顔も思い出せないくらい色々な女性と出逢ったが、何も成果はなかった。

・「恋愛は無理ゲー」その様な表現もあるが、まさにその通りだと思えた。

・正直自分のどこがイケてないのかがわからない。女友達もいるし、「優しいしモテそうだよね」と女性からお世辞を言われることもあった。どうすればたろう氏に彼女が出来るのだろうか。悩んでも一向に答えは出ない。

・そんなたろう氏の無理ゲーは、ある女性との出逢いをもって訳のわからないまま終焉を迎えた。

 


【やり直したい恋】

【やり直したい恋】

・恋愛を成就させるためには熱意やテクニック、お互いの相性だけでなく、プロセスやタイミングも非常に重要である。

・それらを心得、やり直したい恋というものがある。

 


・彼女は高校3年の時のクラスメイト「ちゃあ」。名前は「あさみ」というのだが、何故か彼女は「ちゃあ」というあだ名で親しまれていた。

・ちゃあは明るく元気なバスケ女子。クラスでも人気者のいわゆる陽キャラというやつだ。整った美人というよりは、爽やかなショートヘアととびきりの可愛い笑顔が印象的で、皆から愛されるいじられキャラでもあった。

・ちゃあを好きになったきっかけは校内の合唱コンクールだった。指揮者がなかなか決まらない中、見かねたクラスのボスキャラ女子が「決まんないから、ちゃあで良くね?ちゃあやんなよ!」と圧をかけたのを受け、「え〜わかったよ。やるよ。。」としぶしぶながらもちゃあは指揮者に名乗り出てくれた。

・ちゃあは初めて挑戦する指揮者に悪戦苦闘しながらもみんなの前に立ち頑張ってクラスを引っ張った。指揮のことで分からないことがあれば音楽の先生に度々相談をしに行った。精神的に病んでしまい、保健室から戻ってこなくなったこともあった。

・最初はちゃあのことを気に留めていないたろう氏であったが、クラスのために一生懸命頑張る姿やその温かい人間性に惹かれ次第に恋に落ちていった。内面から女性を好きになったのは初めてのことだった。

・6月の合唱コンクールの打ち上げにて、恋バナとなり、たろう氏は好きな子が同じクラス内にいることをみんなの前で大暴露した。たろう氏の大胆な発言に場が湧く中、「え〜誰だろ〜!?」と言ってちゃあが目をキラキラさせていたことは忘れもしない。「お前だよ!」とたろう氏は心の中で絶叫した。

・今考えるとつくづく自分は恥知らずな人間だと思うが、「先にフラグを立てておいた方が後に周囲の協力を得られやすくなるのではないか」とたろう氏なりに考えての大博打だった。恋愛弱者のたろう氏に恋愛のテクニックはないが、勇気だけはあったのだ。

・とはいえ、クラス内に好きな子がいると公表した手前、その好きな子から連絡先を聞くというミッションは想像以上に難易度が高く初手からして既に詰みかけていた。

 


・悩んだ挙句何も出来ないまま1学期が終わりを迎える頃、9月の文化祭でたろう氏のクラスは劇を披露することに決まった。そして、役割分担の結果たろう氏は運良くもちゃあと同じダンス班になった。

・全体練習とは別に、ダンス班だけで夏休みも個別に集まり練習をするとのことだったので、「班内で連絡を取り合うため」という申し分のない口実が出来、1学期の終業式になんとかちゃあのメールアドレスをゲットすることができた。

・当時はLINEなど存在しないメールの全盛期。メールアドレスの交換方法はガラケーによる赤外線通信が主流だったが、たろう氏のガラケーは機種が少し古く赤外線通信機能がついていなかった。たろう氏が「ごめん、おれの赤外線ないんだ」と言うと、ちゃあは「じゃあ、あたし打つよ!」と快く言って、たろう氏のガラケーを取りメールアドレスを入力してくれた。好きな子にガラケーを預けている間は時計の針が止まったのかというくらいドキドキした。死んでしまうから早く入力してくれと思う反面、このときめいた時間が一生終わらないでくれとも思った。

・簡単な操作で友達登録出来てしまう現在のLINEは便利なツールではあるが、この様な人間の操作が紡ぎ出す甘酸っぱい青春のドラマを体感出来ないことが非常に残念である。

・念願のちゃあのメールアドレスをゲットし有頂天のたろう氏であったが、肝心のメールのやりとりは下手くそそのものだった。向こうからすればただただ面倒くさい時間だったかもしれないが、それでも人の良いちゃあは大抵返信をくれた。

・夏休みの間、たろう氏は大好きな子とメールのやり取りが出来ているという事実に酔いしれてしまっていた。これだけでは2人の関係は何も進展していないという驚愕の事実には気がついていなかったのだ。

・今振り返れば、折角の高校生活最後の夏休みなのだから、友人と何人かで花火大会とかお祭りとかに誘ってみれば良かったと思う。当時のたろう氏の頭にその様な発想がなかったことが非常に悔やまれる。

・一方学校では、文化祭のダンスの練習でちゃあと一緒にいる機会が増えた。

・ダンスの中には男女ペアで手を繋いで踊るシーンもあり、ドギマギしながらもちゃあと何度か手を繋ぐことが出来た。ちゃあの手は小さくてすべすべしていて柔らかくて、そのままずっと握っていたかった。ちゃあがためらいもなくたろう氏と手を繋いでくれたことが嬉しい反面、顔が真っ赤になるくらい照れてしまったのを覚えている。青春である。

 


・ちゃあに最初に告白をしたのは文化祭の打ち上げの時だった。片田舎にある高校だったため、打ち上げは学校近くの土手でいつも行われていた。

・ボスキャラ女子が持ち込んだ缶チューハイをみんなでひっそりと飲み、場が温まった頃、たろう氏は草むらの茂みまでちゃあを連れ出し想いを告げた。

・何て言ったのか正確には覚えていないが、「好きです。付き合ってください」とストレートに言ったのだと思う。

・ちゃあは「好きな人いるから付き合えない」とたろう氏にバッサリ言い放ち1人草むらから離れていった。

 


・遠目とはいえ「クラスのみんなが見てる前で告白すれば振られることはない」という方にたろう氏は賭けていた。しかし、その読みは非常に甘かった。それはテレビの中だけの話だった。

・今思うと、賭けの勝負をしている時点でその告白は既に失敗している。孫子の兵法理論によれば、戦いを仕掛けるのは確実に勝てるという条件を満たした時だけにすべきなのであって、この事例に関して言えば、相手方との事前の関係構築こそが重要だったのである。この恋のやり直すべき最大の反省点はそこにある。

 


・大好きなちゃあに振られたたろう氏は魂が抜け落ち、打ち上げの翌日は生まれて初めて学校をサボった。

・たろう氏が高校生活で学校をサボったのは後にも先にもこの一度きりだ。ちゃあの顔を見たくなかったし、敢えてサボることでもうちゃあのことを諦めざるを得ない気持ちに切り替えられるだろうと考えたのだ。

・その日は隣町の広い公園で1日を過ごし、学校で食べるはずの弁当をベンチで1人空しく食べた。「死にたい」ブランコに長く揺られていると次第にそんな気持ちになっていった。

・失恋の痛みというのはこんなにも辛いものなのか。これが初めての失恋ではなかったが、今振り返ってもこの失恋が人生で1番辛かった様に思える。

・クラス内での失恋というものはあまりにも残酷だった。恋をしている時は幸せに浸れる時間が長い分、それが叶わなかった場合教室は地獄と化してしまう。

・他に好きな子が出来たり環境が変われば失恋の痛みは徐々に和らいでいくものだが、愛しのちゃあが毎日目の前にいる環境において、たろう氏がちゃあを諦めることはできなかった。もう一度ちゃあと手を繋ぎたかった。

・今となっては「他にもいい子はたくさんいるよ」などと自分を慰めてあげたいところだが、当時のたろう氏にとってはちゃあが全てだったのだ。

・最終的にちゃあには3回告白したが、結果はやはりダメだった。何回やってもダメなものはダメなのだ。プロセスからして間違えていることに早く気がつくべきだった。

・そもそも、高校3年と言えば大学受験勉強の重要な時期。たろう氏が勉強に励んでいた様にちゃあもまた勉強に励んでいた。ただでさえ時間が必要な時に好きでもない人と恋愛をしている暇などまずなかった。

・ちゃあと出逢うのがあと1、2年早ければまた違ったアプローチが出来たのかもしれない。

 


・藁にもすがりたいたろう氏は、ちゃあのことで予備校の担任の女の先生にまで恋愛相談していた。担任の先生は授業選択や受験校の相談などをするためにいたのだが、たろう氏にとっては貴重な恋愛相談の相手だった。

・「恋愛にうつつを抜かすよりも今は勉強に集中なさい」と一刀両断されるのかと思ったが、「男の子って意外と繊細なのよねぇ」などとボヤきながらも先生は結構真剣に話を聞いてくれた。最終的には「頑張って勉強していい大学に行っていい子を見つけなさい」という方向に上手く乗せられてしまったが。

・この先生のサポートもあり結果的にたろう氏は第一志望の大学に見事合格。大学に入れば好きな人ができ、ちゃあのことなどすぐに忘れられるはずだった。

・しかし、大学に入ってからもたろう氏はちゃあのことを1年近くも忘れられなかった。今思うと、その1年が非常にもったいなかったが、過去の人生を振り返ってもここまで好きになれる人はいなかったと思う。

 


・ちゃあと結ばれた世界線を今でも想像することがある。きっと毎日が楽しく笑顔に溢れる高校生活になったに違いない。しかし、その夢が叶うことはもう、ない。

・「過去に囚われるのは良くない。未来に目を向けるんだ。何故女性との関係が上手くいかないのかをもっと真剣に分析して改善した方がいいよ。」と若かりし頃の自分に強く言いたい。

・ついでに今の自分にも言いたい。「お前もな」

 


【初恋の記憶】

・何人にも平等に一度だけ与えられる経験「初恋」。後に味わうどの恋愛よりも甘酸っぱく儚い初恋の記憶は、決して色褪せることのない夢物語なのである。


・「おれは同じクラスのゆうかの事が最近気になってる」「おれは2組のミクちゃんと4月から付き合ってる」「おれは好きな人いないなぁ...」

・2003年6月。中学2年の林間学校の夜は眠りに就かない小僧が5人小生意気な恋の話に花を咲かせていた。

・「たろう氏には好きな子いないの?」

・「...。いるよ。」「いるの!?誰?」

・「...。いるけど、実は...。」「実は?」

・「この学年にはいない。」「えぇ!?誰?」

・「...。3年1組の文音(あやね)先輩。」


・「文音さん」それがたろう氏の初恋の女性の名前だった。

・この林間学校での恋バナでクラスメイトに暴露するまで、これが初恋という感情であることには気がついていなかった。自分の胸の内に収まっていた気持ちを言葉にして他者に伝えることで想いが昂ってしまう。初恋とは得てしてそんなものなんだと思う。

・この日を境に、たろう氏は文音さんのことで頭が一杯になってしまった。


文音さんはとても美しい人だった。透明感のある白い肌と地毛の茶色いショートヘアが特に素敵で、ぱっちりしていながらも少しだけ垂れた瞳がとても愛らしかった。さらに、身長が160cm近くあり、当時身長が150cmにも満たないチビであったたろう氏から見れば1学年上のこの先輩はスタイル抜群の魅惑の大人の女性に映っていた。

・また、見た目の美しさに留まらず、文音さんはあらゆる才能に恵まれた女性だった。その例を挙げれば枚挙にいとまがない。

・字がとにかく達筆で、廊下に貼られた書道の作品はとても同じ中学生が書いたものとは思えなかった。まるで師範がお手本として書いた様な完璧な字で表彰もよくされていた。

・透き通った声も綺麗で、学内の合唱コンクールでは文音さんの声がクラスのソプラノパートを牽引している様子が見て取れた。また、その声はたろう氏のストライクゾーンど真ん中に響き渡った。

・また、活動しているところを見た事はないが文音さんは剣道部に所属していた。剣を携え戦う清楚系美少女とか時代劇映画みたいでかっこ良すぎる。その見た目とのギャップもまた文音さんの魅力のうちだった。

・言わずもがな学業もとてつもなく優秀で、通知表では全教科で最高評価を取ることもしばしばあったという噂である。

・極めつけに文音さんは生徒会活動にも積極的で学校のためみんなのために頑張る素敵な先輩だった。たろう氏が学年の違う文音さんを知っていたのはそのためだ。


・容姿端麗、文武両道、頭脳明晰の完璧すぎる人。たろう氏の初恋の人はちょっと可愛いなぁという程度の女の子ではなく後に間違いなくこの国に偉大な功績を残すであろう傑物なのであった。

文音さんが初恋の人だったがために、後の恋愛対象女性のハードルが格段に引き上がってしまったのではないかと思うことがある。文音さん以上に魅力的な女性は「絶対に」この世には存在しないのだ。大変失礼なことだが、たろう氏が後に好きになった女性は皆「文音さんには敵わないが」という前置きが密かに添えられた。

・そんな素敵すぎる文音さんだったが、たろう氏とは一切の接点がなく会話をすることはなかった。学年や部活が違うのだから当然である。ただ、あの人のことを想っているだけで幸せな気持ちになれた。運良くすれ違ったりした日には天にも昇る気持ちだった。いわゆる片想いである。

・たろう氏が文音さんをお目にかけることが出来たのは週に何回かの音楽室への教室移動の時間だった。3年生の教室を通りかかる際に中をちらっと覗いて一瞬だけ姿を垣間見るのがとても楽しみだった。

・また、月に何回かはある全校集会も文音さんと会える貴重な時間だった。あのクソつまらない全校集会を毎度楽しみにしていたのは全校でもたろう氏1人くらいのものだろう。

・そして、どうしても文音さんを拝みたいたろう氏は友人と画策して部活帰りを待ち伏せし少しだけ尾行してみたりもした。今やれば間違いなく犯罪行為だが、中坊が若気の至りでやったことについては多めに見てほしい。

文音さんのことが好きで好きでどうしようもない。日に日に文音さんへの想いは強くなっていった。気がつけば、ノートに徒に文音さんの名前を書いてみたり、意味もなくパワプロの選手やポケモンの名前などにも文音さんとつけてしまうほどのガイジになっていた。これらの愚行はたろう氏のみならず誰しもが一度はやったことがあるはずだと信じている。


・冬のとある日、たろう氏は文音さんに告白することを決意した。動機は定かではないが友人に唆されたのだと思う。

・とはいえ、どうすれば文音さんと2人っきりになることが出来るのだろうか。その答えはやはり尾行だった。

・過去に何度かやったのは、文音さんと帰り道が分かれるところまでの数分間少し後ろから眺める程度のかわいいレベルの尾行だったが、この日の尾行はガチだった。

・たろう氏は普段歩かない道を文音さんが友人と別れるまで尾行し続けた。なお、たろう氏の友人もこれに協力してくれた。

文音さんは4人グループで帰宅していたが、道が分かれ1人また1人とグループのメンバーは減っていった。そして、とうとう文音さんは1人になった。ついに勝負の時が来た。心臓が飛び出そうだった。

・「文音先輩!」たろう氏は走りながら文音さんを呼び止めた。「!?」この時の文音さんのびっくりした表情は一生忘れられない。

・「愛してます。」「え!?」「愛してます。」「...。」

・落とし所のない告白に文音さんは戸惑うもののすぐに平静さを取り戻し、こう応えた。


・「ごめんなさい。でも、...ありがとね。」


・淡白だが、なんて美しい響きなのだろう。

・中学3年生の女性の口から咄嗟に生まれた言葉にしてはあまりにも美しすぎた。そして、「ありがとね」と言った時の柔和な笑顔は今でも目に焼きついている。

・名前も分からない中坊の突然の告白を邪険にせず温かい言葉をかけてくれたことについて、今も心から感謝している。文音さんとの対話はこれっきりで人となりはほとんど分からなかったが、きっと優しい人なんだと思った。


・今思うと何がしたかったのか自分でも分からない。告白をして文音さんと付き合いたいとか仲良くなりたいといった発想はまるでなく、ただただ溢れる想いを伝える必要性に駆られていたのだと思う。

・ただのストーカーだ。自分のしたことが本当に恥ずかしいし、された側からすれば大層気持ちが悪かったと思う。しかし、この告白の経験を消し去るべき黒歴史と思いたくはない。

・この文音さんへの決死の告白の1週間ほど後、たろう氏は体育の授業で脚を骨折をしてしまい長きに亘り松葉杖生活となってしまったのだ。

・その状態のまま3年生の文音さんは中学校を卒業。2度と会えない人となった。

・もし、あの日あのタイミングで告白をしていなかったら、初恋の人に想いを告げることは出来なかった。一生もやもやしていたかもしれないし、文音さんに関する美しい記憶は風化されていたかもしれない。

・「千載一遇」。これはたろう氏が常日頃から頭に入れている言葉だ。千載一遇の機会にはここ一番の勇気を出して信念を貫く。結果がどうあれ、それが生きていく上で最も大切なことだと思う。あの時の精神は今もたろう氏の生きる原動力となっている。

・あの時勇気を振り絞って良かった。文音さんには大切なことを教えてもらった。


文音さん、迷惑かけてごめんなさい。でも、...初恋の人になってくれてありがとね。

 


【あとがき】

・「ここまでの話を振り返ると、たろう氏は、『妻との関係が悪くなり、目移りした若い娘に乗り換えようとしたが失敗し、気を持ち直してなんとか妻とやり直そうとしている残念な男』という理解で間違いないですか? 『はい』か『いいえ』で答えてください。」

2ちゃんねる創設者の様な意地の悪い質問をされたら、たろう氏は「はい...。」と答えざるを得ないだろう。

・たろう氏は清々しいほどのクズである。しかし、それの何が悪い?

・今回の一連の出来事を踏まえて、人生には決まったレールなど存在しないことを実感した。そして、人生は綺麗事ばかりではないということも。

・もし、「灰原嫁との関係が悪化しなかったら」「コニタンと出逢うことがなかったら」「コニタンがたろう氏の虜になっていたら」「灰原嫁と別れていたら」。1つでも違う分岐をしていたら、全く違う世界線になっていたことだろう。

・そして、それが自分の運命だったのだと後から結論づけてしまうのだろう。

・然るに、たろう氏の考える運命とは「成り行きに身を任せながらも、自分自身の行方を模索し続けた過程そのもの」であると考える。

・たろう氏の行方はやはりたろう氏にもわからない。しかし、後から振り返ればそこにはたろう氏の運命が垣間見える。

・これから先もたろう氏の側には灰原嫁がいるだろう。しかし、再び関係が悪化してしまったら?まだ見ぬ第二第三のコニタンに出逢ってしまったら?その人がたろう氏と蜜月関係になってしまったら?たろう氏にこれからモテ期が来たら?...来ないか。

・たろう氏の33歳は壮絶に悩ましい1年となった。これから先も見えざる脅威との戦いは続くことだろう。

・しかし、年老いて目蓋が閉じる時には今をこの様に振り返りたい。

・「まずまずだな」


【③たろう氏の行方(下巻)〜叡智の魔法〜】

・たろう氏は考えるのを辞めた。

・「灰原嫁ともう一度やり直せるのかどうか」それは考えるよりも行動に移した方が確かな答えが出ることを本能的に悟ったためだった。

・来たるXデー。たろう氏は灰原嫁が来るのを寝室でじっと待ち続けていた。

・我が家の家事育児の分担として、夜はたろう氏が子どもを寝かしつけ、その間に灰原嫁が皿洗いや片付け等を行うこととなっており、たろう氏は子供と共に先に寝るのが習慣になっていた。

・これは習慣というよりももはや1つの約束事。子どもが生まれてから、さらには子どもの妊娠が発覚してから4年、夜の営みが行われることはただの1度もなかった。

・妊娠出産育児にコロナ。営まない言い訳を挙げればきりがないが、4年という歳月はあまりにも長すぎたように思う。今となってはどん底まで冷え切った夫婦関係ではあるが、4年前は喧嘩する事も滅多にない夫婦だった。

・4年前の社会を思い返すと、サッカーのリオネル・メッシカタールの地でW杯を高々と掲げる未来など誰しもが想像できなかった。日本の元総理大臣が銃殺されることなどあってはならなかった。そして、あの頃はコロナなんて流行っていなかった。

・公私共に激しく揺れ動いたこの4年間の狭間にたろう氏と灰原嫁の関係だけが取り残されていた。家族となった2人は夫婦としての歩みを止めていたのだと思う。

 


・夜の1時が過ぎ、ようやく灰原嫁が寝室にやって来た。たろう氏はここ一番の勇気を振り絞って営みに誘った。

・「断られたらどうしよう」心の中はその想いで一杯だった。何を隠そうたろう氏が営みへの誘いを口にしたのは初めてのことだったのだ。

・前述のとおり、2人の最初の営みは灰原嫁の方から誘われたのだった。付き合っている期間や結婚当初は言葉を発さなくても一緒に布団に入ることを合図に自然に始まる感じだったし、妊活が始まってからは、「今夜お願いします」と向こうの方から業務的なLINEが来る感じになった。こと営みに関してたろう氏は常に受け身だった。

・故に、この度はめちゃくちゃ緊張した。死ぬほど恥ずかしかった。しかし、灰原嫁は一切躊躇することなくたろう氏の想いを受け止めてくれた。この日が来るのを4年間ずっと心待ちにしていたのだろうか。

・久しぶりのキスは温かくてとても懐かしい感触だった。灰原嫁のことを深く愛していたあの頃をなんだか思い出す。。肌触りも匂いも忘れかけていた。あの頃と変わらない2人だけの時間。この感じが好きなんだった。時間が巻き戻っていくのを肌で感じた。

・体は心よりも正直だった。気がつけば2人は1時間以上も狂った様に求め合っていた。まるでこの4年間の空白を埋め合わせるかのように。この間、隣ですやすやと眠っている我が子のことは気にも留まらなかった。

・「寂しかったよね、ごめんね。」枕元でたろう氏が言うと、「ううん。嬉しい。」と灰原嫁は答えた。その言葉が聞けてなんだかとても幸せな気持ちになった。

・2人の心は4年ぶりに繋がった。2人に足りないものは叡智だった。

 


・翌日、たろう氏はいつになく穏やかな気持ちになっている自分に気がついた。灰原嫁もなんだか落ち着いている様だった。

・もう細かいことはどうでもいい。安らぎを感じることのできる相手がいるというのはとても幸運なことである。たろう氏は既に幸せ者だったのだ。今までのことは全部忘れてもう一度灰原嫁とやり直したい。そう思った。

・全てを許してしまう力。これがいわゆる「叡智の魔法」だ。そして、この魔法について今回新しく分かったことがある。

・今まで、この魔法を必要としているのは灰原嫁の方だと思っていた。安らかな気持ちになるために、たろう氏と1つになる必要があるのだと。しかし、そうではないことを知った。今魔法を必要としているのは寧ろたろう氏の方だ。

・そして、これは魔法でもなんでもないということも知った。魔法だと思っていた力は嘘偽りのない愛がもたらす2人の歩み寄りの証なのだ。

・「愛」。そうか、ジョンレノンがよく言っていたやつか。

・たろう氏は1つ気づきを得た。

 

つづく

【③たろう氏の行方(中巻)〜 10.13バズーカ〜】

・結局たろう氏はコニタンへの想いを諦め切れなかった。

・恋仲でなくてもいい。お互いの本音を打ち明けることが出来る先輩後輩の関係になれたなら...。

・コニタンの脈を正確に測るためにたろう氏に残された最後の手段。それが10.13バズーカだった。

・10/13はもともと課の飲み会が予定されていた日であり、灰原嫁にはこの日の帰りが遅くなることの許可をもらっていたため、課の飲み会が延期になったことを秘密にしながら、この1日をいかに有効活用出来るかがたろう氏の最重要課題となっていた。

・これを機にたろう氏はコニタンとのサシ飲みを画策。「陸上競技大会の奇跡」により、コニタンとは既にサシご飯を済ましているので、その次のステップアップとしてのサシ飲みはさほど違和感のないお誘いであると思った。もうリスクを背負ってまでOに協力要請する必要はない。

・なあなあな返事だとしても拒否されれば脈はほぼなしと今度こそ諦めがつく。逆に乗っかってくれれば超ラッキー。1度へこんでいるたろう氏はそのくらいのメンタルで臨むことにした。

・もはやバズーカの目的は「切れかかった首を綺麗に切断してもらうこと」に他ならなかった。今のままでは生きた心地がしない。

・そして、たろう氏は勇気を振り絞って既読スルー後初のLINEをコニタンに届けた。

・業務的な内容で送ったため、薄い内容ながらもコニタンは返事をくれた。次はいよいよ飲みのお誘いだ...。たろう氏はコニタンに向けバズーカ砲の引き金を引いた!

・バズーカ砲はコニタンに直撃した。長考の末今度こそ既読スルーされるのではないかと心配したが、コニタンはまたも返事をくれた。しかも前回よりレスポンスが早い。もしや...!?スマホが鳴った瞬間高まる期待に心臓が止まりそうになった。

・しかし、LINEを開いたときたろう氏の心臓は本当に止まった。

・「すみませんが、社内でトラブルになるといけないので既婚者とのサシ飲みは出来ないです...。」

・...。コニタンの言っている事は間違いなく正論だった。脈の有無以前の段階でたろう氏には妻以外の女性に恋をする資格がなかったのである。

・コニタンの真っ直ぐすぎる正論に諭され、たろう氏は現実に立ち返り唖然とした。自分は、コニタンの様な清廉潔白で徳のある女性に世で言う「風鈴」とも受け取られかねない行為を強要しようとしていたのか。自分の卑しさが恥ずかしくてならない。

・我に帰ったたろう氏はコニタンに心の底からお詫びの気持ちを伝えた。するとコニタンは「私が気にしすぎているだけなので全く気になさらないでください。私の方こそ恥ずかしいです。たろう氏にはいつも気にかけていただき感謝しています」と優しく応えてくれた。

・何て出来た人間なのだろう。コニタンはたろう氏が想像していたよりも遥かに情の深い女性だった。コニタンはたろう氏からのバズーカを振り払い、返す太刀で首を無慈悲に切り落とすのではなく、たろう氏の傷口を労り絆創膏を貼って癒してくれた。

・...ダメだよ。そんなに優しくされたら益々辛くなってしまうじゃないか。。もうこの想いは捨てなければいけないのに。。。10.13バズーカは本来の使命を果たせなかった。失敗である。

・コニタンに優しく振られ、途方に暮れるたろう氏。予定のぽっかり空いた10/13は柄にもなく1人キャバクラに出向き、見ず知らずのチャンネーと共に一夜を過ごし失恋の傷を紛らわせるのであった。


つづく

【③たろう氏の行方(上巻)〜たろう氏の苦悩〜】

・たろう氏と灰原嫁が置かれている様な状況を世間一般的に「産後クライシス」と呼ぶらしい。

・産後クライシスについては、子どもが生まれる前からネットで記事を読んでなんとなく知っていたが、その時は「こんな夫婦もいるんだなぁ。気の毒だなぁ。」くらいにしか感じなかった。

・つまるところ、いくら予備知識があったところで、リアルな女心というものはよくわからないのだ。

・何故灰原嫁はたろう氏の側から離れていかないのか。

・たろう氏からの気持ちがなくなっても、たとえ愛を忘れてしまっても、灰原嫁の気持ちはまだ僅かに残されている。

・出逢って間もない頃の愛し合う2人に戻りたい。灰原嫁は今でもそう願ってくれているのだろうか。叡智の魔法を甦らせることは出来るのだろうか。

・とは言え、長年共同生活を営む上で明るみになった「夫婦の価値観の不一致」はそう簡単に受け入れられる代物ではない。今は一時的にヨリを戻せても何年後かにはまた同じ様にいがみ合っている可能性もある。

・灰原嫁への愛を思い出し、生涯添い遂げることは出来るのだろうか。それがたろう氏の運命なのだとすれば。気分はまるで困難に立ち向かうあの名探偵の様だ。

 


・そして、たろう氏を悩ませるヒロインがもう1人...。

・コニタンとの関係は本当にもう諦めてしまって良いのだろうか。

・早々に脈なし判定を行ったが、これは恋愛弱者のたろう氏が豊富な失恋経験に基づき、深追いをして傷つかないように一旦手を引いたまでのこと。

・向こうが奥手なだけで実は脈ありという勝ち筋も僅かながらまだ残されている。いちご100%集英社)を信じろ。

・脈なしなら脈なしで完全に首を切り落とされるまでは勝負をしたい。そんな欲求にも駆られてしまう。人生が180度変わる可能性もあるのだから。

・果たして、コニタンを側に迎え入れ、たろう氏が新世界の神タロパティーンとなる日は来るのだろうか。

 


・たろう氏の行方はたろう氏にもわからない。悩みに悩む今日この頃。たろう氏にとって、側にいてほしい女性は誰なのか。側だけに、蕎麦屋で天ぷら蕎麦でも食べながら今後のことをゆっくり考えることにしよう。


つづく